むかしむかしあるところに、ブラック企業にひっかかったひとがいました…後編
あらすじ:ブラック企業ではたらくむけいかくなひとは、ある日、飲み会がたたってパソコンの前で居眠りしている「しゃちょう」を見かける…。
昨夜の飲み会でのことです。
しゃちょうはお店で、若いころの犯罪歴やそれのもみ消し方などを大声でしゃべり、
あげくに他のお客さんをなぐったりしたので、みんなは気が気ではありませんでした。
飲み代はみんなでしゃちょうの分も払いましたが、
しゃちょうはべろべろによっぱらっても
「領収書、株式会社○○で」
というのは忘れませんでした。
さて、夕方になって、会社にお客さんがやってきました。
そのひとは、なじみのひとではなかったので、
しゃちょうはけんもほろろの扱いをします。
お客さんは、とても居心地が悪そうにしていましたが、
すぐに逃げるようにしてでていってしまいました。
むけいかくなひとは、あまりの態度にあぜんとして、
おもわずしゃちょうを
じっとみつめてしまいました。
しゃちょうは言い訳なのか、
「おれ、○国人だからひとが信用できないんだよね~」
と言いました。
ちなみに昨日は
「おれ、にほんじんだからさ~」
おとといは
「おれ、なにじんでもないからさ~」
と言っていました。
使い分けがとてもじょうずなのです。
しゃちょうはなぜかそのままお説教モードに突入し、
なぜかすみっこのほうでおとなしくしていた社員のご両親のことを馬鹿にしはじめました。彼は泣き出してしまいます。
むけいかくなひとは、あまりの訳のわからなさに、目がくらみました。
にんげん、理解の範疇をこえるできごとがあると目がくらむものなのです。
目がくらんだはずみで、むけいかくなひとは、
「訳がわかりません」
と、しゃちょうに言ってしまいました。
そして、まったくの無計画ですが、ついつい
「たいしょくさせていただきます」
とも言ってしまいました。
「こようけいやくしょ」がなかったのですから「たいしょくとどけ」も必要ないでしょう。
社内はシーンとなってしまいました。
むけいかくなひとはこれでも腹心の部下ぐらいには思われていたので、しゃちょうもびっくりです。
しゃちょうは初め、冷静さをよそおって
「いいよ、べつに」
などと言っていたのですが、だんだんと怒鳴り声に変わっていきます。
「コノサキロクデモナイジンセイヲオクレ!!」
むけいかくなひとは、ぼーっと聞いていましたが、ふと
「いま帰れたら夕日がみれるなぁ…」
と思いました。
しゃちょうがヒートアップして、
「イマスグデテケヨコノヤロー!!!」
というので、いそいで荷物をまとめます。夕日が見てみたいのです。
みんなにあいさつをして、ついに外に出ると…
「目がぁ!目がぁ!」
入社してから長いこと夕日など見たことがなかったので、いろんな意味で目がしょぼしょぼしました。
会社の中からは、
「タイシタタマダナゴルァ!!」
などと聞こえてきましたが、むけいかくなひとにはもう関係のないことです。
きっとみんなは、しゃちょうがフェイスブックに飽きる夜中ごろまでしごとを続け、
日課の「深夜の八つ当たりタイム」に耐え、
また明日からも休みなく同じ毎日をくりかえすのでしょう。
けっきょく最後の月のお給料は支払われていませんが、弱みをにぎられているらしき社員もいる中、むけいかくなひとは逃げ出せただけましだったようです。
こうしてむけいかくなひとは、むけいかくにむしょくになったのでした。
~おわり~
あとがき
まっくろになる前に人間の尊厳を取り戻せて良かったです。
無職だけどねっっ!
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