零細ブラック企業の社長による、洗脳の恐怖ー激怒編

傍から見ると、完全にブラック企業なのに、なぜかいつまでも辞めない人は皆さんの周りにはいないでしょうか?

もしくは、仕事がきつくてプライベートの時間はほとんど取れないけど、もっと頑張らなきゃ!と思っている人はいませんか?

 

もしそうなら、一度、会社に洗脳されていないかどうか、考えてみてください。

そんな大げさな…宗教団体とは関係ないぞ、と思われるかもしれませんが、私が以前勤めていた零細企業で、実際に同期が洗脳されていく様子を目の当りにしました。

その様子を何回かに分けて詳しく書いていきますので、しばしお付き合いください!

 

http://www.flickr.com/photos/13648123@N08/3221301604

photo by Alex France

B君は、学校を卒業し、晴れて正社員として就職することになりました。不況の今、B君の希望した職種は、不況の影響を受けて、正社員の募集がかなり減っていました。卒業後、希望する道に進めず、全く違う分野に就職した同級生が多い中、B君は希望通りの仕事に就くことができました。就職先は、社員数が数人の零細企業でしたが、最初から自分の技術を存分に活かすことができそうだったので、B君はやる気に満ち溢れていました。

 

「おはようございます…」

B君は比較的裕福な家庭で育ったため、学生時代もアルバイトをしたことがなく、出勤すること自体が初めての経験だったので、どきどきしながらドアをノックしました。オフィスに入ると、なんだか社内が閑散としています。すると奥の方から

「おー、B君!」

と、社長がでてきました。そして、もう一人、面接のときには見かけなかった若者がでてきました。

「初めまして、新入社員のMといいます。よろしくお願いします」

「あ、Bです、よろしくお願いします」

そうやって自己紹介をしていると、社長が言いました。

「じゃあ、さっそくだけど、ちょっと掃除してもらってもいいかな。ものどかさないと、机が空かないんだよね」

B君は「確か面接のときには、ちゃんと机を用意しておくって言ってたはずだけどなぁ」と思いましたが、業務が忙しかったのだろうと思い、素直に掃除を始めました。

「とりあえず、好きなように棚使っていいから。あとどうしたらいいか分かんないのあったら聞いて」

と言って、社長は奥へ行ってしまいました。右も左も分からずおっかなびっくりのB君とM君は、とりあえず机の上の色々なものを、棚に押し込むことにしました。

http://www.flickr.com/photos/67211265@N00/510227143

photo by Handforged

「B君、面接来たとき、ここの席、先輩が使ってなかった?」

「うん…先輩来ないのかな?」

B君たちが面接を受けたとき、技術職の先輩が一人いたのですが、出勤してくる様子がありません。この会社を志望した理由の一つに、その経験豊富な先輩に色んなことを教えてもらえるから、というのがあったので、B君は少し不安になりました。

なんとなく片付け終えて、問題の先輩の席をどうしたらいいか、社長に聞きにいくことにしました。

「社長、あの、ここの机はどうしたら…」

「あぁ、そこも適当にいらないもの捨てちゃって」

と言いながら、社長自ら机の上のものをどんどん捨てていきます。中には、まだ使えるんじゃないかと思うようなものもありましたが、気にする様子はありません。

「あのさぁ、君たちがこれからこの会社を作っていくんだから、自分たちの使いやすいようにすることも、仕事のうちなんだよ。なんか足りないものあったら買うから言いなさい」

どうやら、経費にうるさくない社長のようで、B君は嬉しくなりました。思う存分、開発ができそうです。先輩について一言も触れないのは、この際忘れることにしました。そうして、その日は、一日中片づけをして終わりました。

 

次の日、社長が

「じゃあ今日は、B君はこれが得意って言ってたから、ここ修正してみて。M君はとりあえずこれやって」

と仕事を割り振りました。B君にとっての初仕事です。しかも、いきなり大きな仕事を任せてもらえました。張り切ってとりかかりますが、なにぶん実戦経験はなく、どうやって進めたらいいのか分かりません。しかし、いきなり分からないと言ってしまえば、失望されそうなので、B君は黙って自分なりに工夫して進めていきました。

一方、M君は、どうしてもその装置がないと出来ないことがあることに気が付きました。そういえば、昨日先輩の机の上にあったのを社長が捨てていたような気がします。ですが、ないものはどんどん買うと社長が言ったのを思い出して、

「あの、社長、あれがないとできないんですけど…」

と言ってみました。すると、

http://www.flickr.com/photos/17731548@N00/466865504

photo by Cayusa

「あのさぁ、学校ではなんでも揃ってたかもしんないけど、これは仕事なんだから、ないない言ってないで工夫しなさいよ」

と言われてしまいました。ですがどう考えてもそれなしでは無理があり、技術者なら誰でも分かりそうなことです。M君があっけにとられていると、

「ネットでそれなしでやってる人のブログがあるよ、ほら。俺ちゃんと学校行ってないけど、こうやって毎日ブログ読んで勉強してるんだよ」

と社長が自慢げに言い、パソコンの画面を見せてきました。

ところがそれは、設備が充分でない素人が、出来る範囲でプロの真似をしたブログで、とてもそのレベルでお金を取る事ができるようなものではありませんでした。面接のときの話からして、この業界のエキスパートであると思っていた社長がそのレベルだったことに、M君はがっかりしました。しかも、例の先輩も、もういないようです。色々教わりながら経験を積んでいくのが普通であるこの業界において、この状況は絶望的でした。どうやら、M君もB君も、社長に騙されていたようです。

しかし、がっかりしている場合ではありません。社長はできるできないに関わらず、どんどん受注を受けてしまっており、今更できないという言い訳は顧客には通用しません。

 

背中でそのやり取りを聞いていたB君は戦々恐々です。

http://www.flickr.com/photos/65096584@N00/2138474993

photo by Pablo Municio

というのも、そのときB君も同じような状況に陥っていたのですが、かなりいらいらしている様子の社長をこれ以上刺激したくなかったのです。折しも社長の業務に関する知識が素人レベルであることが判明したので、このままごまかしつつ進めていけば、何とかなるだろうと判断し、その場で問題を口にしませんでした。

 

ところが、なぜかこのことが社長にばれてしまったのです…。

 

つづく。

 

 

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