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むけいかくなひと、しごとをさがす

むけいかくに生きていくとどうなるか実験中のブログです

まずは自尊心を破壊すべし!ブラック企業の作り方まとめ

前回までの計4回にわたって、「零細ブラック企業の社長による、洗脳の恐怖」と題して、新入社員がブラック企業の社長に洗脳されていく様子をお伝えしました。多少脚色した部分はありますが、ほぼ私がブラック企業時代に見てきたことそのままです。そのときは気づいていなかったのですが、今になって振り返ってみると、洗脳されてしまった原因が見えてきました。

今日はその洗脳のポイントをまとめてみます。

 

《零細ブラック企業での洗脳の手順》

 

1. 自尊心を破壊する。

http://www.flickr.com/photos/70606346@N00/5837775701

photo by kurichan+

まず新入社員は、指示された事をうまくこなせるように頑張ります。大抵誰もが「こいつ使えないな」と判断されたくないが為に、真面目に頑張るでしょう。

真面目な人ほど、自分の実力以上に自分を良く見せようと頑張るのではないでしょうか?

面接を受けるときの気持ちといえば分かりやすいでしょうか。

ブラック企業の社長は、この気持ちにつけ込んできます。

私のいた会社の場合、まず最初に難しい仕事をやらせたり、こなせない量の仕事をやらせたりしてきました。当然、最初は

「無理です」

なんて言いません。出来る限り努力して、仕事を進めますが、そううまくはいきません。そしてミスが出たり、時間内に終えられなかったりします。社長はここで、

「今まで何を勉強してきたんだ」

「会社(もしくは社長)をなめてんじゃねえぞ」

さらには論理を飛躍させ、

「人としてありえねえだろ」

などと、社員の過去や人間性を否定してきます。これを毎日かかさず繰り返されると、よっぽど自分を保っていられる人でない限りは、自信を無くしてしまいます。そして、仕事に関わる能力の部分だけでなく、個人の人格そのものを否定するので、自尊心が傷つきます。

 

ここで言う自尊心とは、自分を大切に思う心のことで、けしてナルシストのような性格のことではありません。

誰にも行動や思考を制限されることを良しとしない、つまり、自分は生きていてもいいんだとか、自分の好きなことをしてもいいんだ、というような、人として認められてしかるべき権利を放棄しないでいることができるのが、自尊心があるということだと思います。

自尊心がしっかりとしていれば、精神的に安定した健康な状態でいることができます。周囲の人に受け入れられたいと機嫌を取ったり、嫌われたくないと必要以上に気を使ったりするのも、他人から認めてもらえないと自分には価値がないと思ってしまう、つまり自尊心が欠如している状態と言えます。

 

自尊心をしっかり持っている人は、辛い状態に置かれたときに、それを正しく判断できます。自分に必要以上の精神的負荷を掛ける事を良しとしません。それは人間が生きていく上で重要な事です。鬱病にならないように備わっている能力です。

しかし、自尊心が破壊されてしまうと、その能力がうまく機能しなくなります。ですから、精神的または肉体的に辛い状態に置かれると、

「自分はよく頑張っている。偉い」

と勘違いしてしまいます。我慢することを頑張っているのに、仕事そのものを頑張っていると思い込むことで、自己肯定感をかろうじて保つのです。

よって、自尊心を破壊されてしまうと、ブラック企業の社員への第一歩を踏み出してしまったことになります。

さらに社長は、精神的に不安定な状態を活用して、次の段階へ進みます。

 

 

2. 肯定し依存させる。

http://www.flickr.com/photos/7940758@N07/6917521432

photo by MIKI Yoshihito (´・ω・)

 自尊心を破壊された社員は、卑屈になってしまい、ともすれば仕事を辞めてしまいかねません。これでは、社員を洗脳し、奴隷にするというブラック社長の目的は果たせません。

では、どうするかというと、一度破壊した自尊心を上手くくすぐるのです。前の記事でも書いた通り、一度こきおろしておいてから、

「まあ、よくやってるよ」

といったかんじで理解を示したふりをします。そうすると、社員は安堵し、認められたと勘違いします。

 

ブラック企業の社員というのはちょうど、虐待されて育った子供に似ています。子供というのは親から唯一無二の愛情を受けることによって、自己肯定感を満たします。絶対的な存在である親に認められなければ、自分はいてはいけないんだ、と無意識に考えるようになります。

自分の存在価値を自分で認めることができなければどうするかというと、他人に認めてもらうことによってそうするしかありません。

よって、前項に書いた通り、他人に嫌われることを異常に怖がったり、どうすれば相手に受け入れてもらえるかということを常に気にしたりするようになってしまいます。要するに、他人に媚びへつらう人間になります。

零細ブラック企業では、社長がその対象となります。

零細企業であるがゆえに、

”社長に見放される=解雇”

となりますから、解雇されたくなければ社長に媚びるしかありません。

 

ではなぜ、解雇されたくないと思うようになってしまうのでしょうか?

そんなに酷い社長なら、転職してしまえばよいのではないでしょうか?

 

確かに、私も、そして前回までの話に登場したB君も、早い段階で一度は辞めようと考えていました。しかし社長は、このタイミングをうまく捉え、社員の努力や能力を肯定するのです。これにより、自尊心を破壊されている社員は、自己肯定感を刺激されてしまうのです。

皆さんは、恋人から酷い扱いを受けているのに離れられないという人を見聞きしたことがありますか。何度も浮気されたり暴力を受けているのに、

「ちゃんと謝ってくれるから」

「結婚しようって言ってくれてるから」

「あの人には私がいないとだめだから」

などと言って、周りの忠告を無視して不幸な関係を続けるというのがよくあるパターンですが、これは恋人に依存している状態です。

充分な愛情を受けずに育ち、自尊心を高めることができなかったために、自分を認めてくれる存在を過剰に求めてしまい、恋人という形でそれが見つかると、恋人を失う事を極度に恐れ、自分の本当の感情を殺してまでも機嫌を取り続ける…

まさしく、ブラック企業に洗脳されてしまう心理と同じです。

http://www.flickr.com/photos/44975173@N05/6857604982

photo by Hibr

ブラック企業の社長は、一度自尊心を破壊した後で、

「よくやってるよ」

と社員を肯定し、さらには責任の大きな仕事をやらせたり将来の希望を抱かせたりすることで、自己肯定感を刺激し、自分の元から離れられなくさせます。

 

 

3. 「自分だけ」感を出す。

http://www.flickr.com/photos/28045310@N08/3643273492

photo by AJU_photography

ブラック社長が自分の元から離れられなくさせる手口には、前項の他にもう1つあります。それは、自分の事を尊敬させることです。

零細ブラック企業の社長による、洗脳の恐怖ー飴と鞭編 」でも書きましたが、私が勤めていたブラック企業の社長は、有名人との交際歴が自慢でした。それを毎日毎日聞かされ続けた私たちは、根が素直(?)だったこともあり、社長ってすごいなあと思わされてしまいました。しかも、仕事にその人脈を活かせるかもしれないという甘い罠をちらつかせられれば、仕事熱心な若者ほど、

「この会社にいるしかない」

と思ってしまいます。しかも、ブラック社長は倫理観がありませんから、平然と嘘を言います。自慢話も多いに脚色されている可能性が高いです。

 

また、社員の欠点を激しく攻め、それを見抜けたのは自分だけ、という雰囲気を醸し出します。普通、他人の欠点はそれとなく伝えたり、長所も一緒に伝えるなどして、本人が受け入れやすいようにするものですが、ブラック社長の場合、頭ごなしに怒鳴るなどして伝えます。その後、

「こんなこと今まで言われたことあるか?ないだろう。だから俺がわざわざ伝えてやったんだ。感謝しろ」

という論理を押し付けます。気が動転している社員は、それをそのまま受け入れてしまい、

「自分は社長に鍛えてもらっているんだ。こんな風に世話してくれるのは社長しかいないんだ」

と感じるようになります。

 

さらに、若い頃の苦労話をするというのも、ブラック社長に多いと思われます。今まで出会った人たちの中で、本当に能力が高く人格者であると思った人が何人かいますが、そういった人たちは決して苦労話を自慢することはありませんでした。

これも最初の項で書いた、自尊心が高い人は辛い状態を辛いと判断できるということに繋がってきます。無駄な苦労をして自分を痛めつけるということがありませんから、当然、他人に苦労話を自慢げに聞かせたりはしません。それは異常だという事が分かっているからです。ましてや、辛いだけで実にならない事を他人にもやらせるなどということはありません。

しかしすでに

「この会社にいたい」

と思わされてしまっている社員は、社長に媚を売るようになっていますから、

「俺は若い頃は寝ずに働いた」

と言われれば、自分も社長のように頑張っているところを見せて認めてもらおうとします。

 

 

4. 判断力を失わせる。

http://www.flickr.com/photos/24029425@N06/8094117489

photo by Boston Public Library

ブラック社長の洗脳の仕上げは、自分で正邪を判断できなくさせること

です。

最初の段階で、社長に恐怖を感じるようになっているので、常に社長の顔色を気にしながら働くことが普通になっています。そして、この会社で働く事が自分にとって良い事、というよりは、これ以外に道がないと思わされているので、必死で社長に媚を売ります。

ブラック社長は当然のような顔で顧客を裏切りますし、顧客の喜ぶことを第一に考えて行動するということはまずありません。最初は、

「そんな態度で大丈夫かなあ」

と思っても、それをずっと見ていると、それが普通のように思えてくるので、自分もそのように振る舞うようになります。特に、前回までのはなしにでてきたB君のように、働くのが初めてという場合、それが社会常識だと簡単に信じて、今まで自分の培ってきた良心を簡単に壊してしまいます。

また、長時間恐怖に支配されて過ごすので、おどおどと他人の反応を気にする癖がついてしまい、自分が正しいと思ったことを堂々と行うことができなくなります。元からそういう性格でない限り、周囲の人は様子が変わったことに気づくでしょう。

しかし、ここで効いてくるのが「長時間労働」です。

深夜まで勤務し、休日もほとんどない状態では、家族や友人達と過ごす時間が激減しています。特に技術系や事務系の人は、会社の人間以外の人と話す機会がなかなかありません。

「それはおかしいよ」

「最近様子が変だよ」

と誰かに指摘されることもなく、そのままずるずると社長の価値観に染まっていきます。

 

こうして社長の顔色だけを気にして働く奴隷のようなブラック社員ができあがります。

 

 

《まとめ》

  1. 「自尊心」を失わせること。
  2. たまに「飴」を与えること。
  3. 限定感を出すこと。
  4. 長時間労働で他人との接触をなるべく少なくさせること。

最も大事なのは「自尊心」です。自分の意志で生きていくのに重要なものです。自分の人生は誰のものでもないことを明確に意識することが、ブラック企業に洗脳されない重要なポイントだと思います。

大人気小説「十二国記」シリーズはファンタジー小説ですが、誰もが感じたことのある自尊心を保つ事の難しさをリアルに描いています。

最後の、誰にも媚びないで生きる事の大切さを訴える台詞は、個人的に「声に出して読みたい日本語」に選ばれてもいいと思うぐらい素敵だと思っています。この台詞が頭にあったことも、ブラック企業から抜け出せた一因な気がします。

 

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