零細ブラック企業の社長による、洗脳の恐怖ー大激怒と肯定編
【前回のあらすじ】
B君は零細企業の新入社員だ。B君は業務上の問題点を発見したが、社長の機嫌を損ねるのを恐れるあまり、それを報告しなかった。ところがそのことが社長にばれてしまう…
その日は日付を超えるまで会社にいました。M君は以前、企業倫理のしっかりした大企業に勤めていた経験があり、無駄に残業はしないという、社会的常識ともいえる感覚が身に付いていました。しかし、入社2日目で、
「仕事終わったんで帰りまーす」
とはなかなか言えるものではなく、また、何時が終業時刻なのかもはっきり提示されていなかったので、そのうち社長が何か言うだろうと思って待っていました。
しかし、社長が帰ろうとする気配はありません。そしてB君は、異常なまでの集中力を発揮し、時間を忘れて作業に没頭していました。例の装置なしでは、通常の何倍も労力がかかってしまうので、その日のうちに終わらせることはどちらにせよ不可能でした。
そして翌日、社長がB君の作業をチェックし、B君が独断で作業を進めたことに気づいてしまいます。
「ふざっけんなよ!お前なんなんだよ!雇ってもらってるくせに裏切るんじゃねえよ!」
社長は鼓膜が破けるような大声で怒鳴り始めました。B君はびっくりして固まってしまいます。
「お前、ホウレンソウって知ってるか?社会人の基本だろ?こんくらいできてもらわなきゃ困るよ」
B君は働くのは初めてですから知らなくても無理はありません。
やがて話の内容は、行為そのものよりも、B君の人格を否定するようなものに変わっていきます。
「お前は今まで何を教わってきたんだよ!お前の親、何も教えてくんなかったの?どういう親なんだよ!」
B君は、今まで両親のことを罵倒されて思わず涙が出てきました。
「泣いてどうすんだよ!成人してんだろーがよお!」
B君はもちろん、M君も、精神的に限界でした。B君はものを考える余裕がありませんでしたが、直接の標的になっていないM君は、この人正常じゃないな…と思い始めていました。
やがて2時間ほどたった頃、社長はやっとトーンダウンし、
「まぁ、最初だしな…」
と言いました。
そして、さっきとは人が変わったかのように穏やかになり、
「よくやってると思うよ。働くの初めてなんだろ?これから頑張ってくれればいいんだから。」
とB君をねぎらいます。B君は許してもらえたことに心からほっとしました。
「ほんとは優しい人なんだ…」
そう思うと、余計に涙が出てきてしまいました。今度は社長も何も言いません。その後、自分が若い頃のことを語り出しました。
「俺なんか若い頃は殴られまくってたけど、自分なりに工夫して頑張ってたよ。寝る暇もなかったしな。すげー苦労したよ。でも頑張ったから、今は社長になれたんだよ。今だって勉強してるんだよ。新人は死ぬ思いで働かなきゃ。」
それを聞いてB君は、自分ももっともっと頑張って偉くなるんだ!と決意を新たにしました。
しかしこの日以降、B君とM君は毎日社長の罵声を浴びせられることになるのです…
つづく。
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【零細ブラック企業の社長による、洗脳の恐怖シリーズ】
第一話
第三話
第四話