零細ブラック企業の社長による、洗脳の恐怖ー飴と鞭編
「零細ブラック企業の社長による、洗脳の恐怖」シリーズ第三話
【これまでのあらすじ】
B君は零細企業に就職したが、ブラックな社長の機嫌を損ねないように仕事をしたところ、入社3日目にして大激怒される。長時間怒鳴られたため解雇されるのではと思ったが、幸い社長はB君がこれまで働いた経験がない事に理解を示し、B君を励ます。B君は不安から解放され、頑張ろうという決意を新たにするが…
第二話:零細ブラック企業の社長による、洗脳の恐怖ー大激怒と肯定編
B君が怒られているのを隣で聞いていた同僚のM君は思いました。
「これってぼーりょくだんのやり方じゃん…」
M君は以前していたアルバイトの経験上、そういったことに詳しかったのです。つまり、人を極限まで追いつめておいてから、ふっと態度を軟化させると、その追いつめられた人は、相手を優しい人だと勘違いして、相手のペースに乗せられてしまうのです。
社長のやり方は、いわばその筋の常套手段でした。M君は、B君が勘違いしないか不安になりました。しかし、B君は社長の罠に嵌り始めていたのです。
翌日も、その次の日も、B君は社長に怒鳴られ続けました。それもそのはずです。社長は毎日B君を叱りはしますが、内容はいつもB君がどれだけダメな人間かというようなことであって、仕事のやり方を具体的に指導するといったことは全くありませんでした。ですから、B君は結局何が原因で怒られているのかということが理解出来ないまま、それでも必死で仕事をしていたのです。それも、通常ならベテランがやるような高度な仕事を、です。
B君には自負がありました。同級生の多くが満足に就職出来ない中、B君は希望通りの職種に就くことができたからです。また、就職できた同級生たちも、当然まだ研修期間中などで、簡単な仕事しか任されていません。そんな中、B君は一人前(以上)の仕事を任されていましたから、同級生達のなかで早くも出世頭のような存在になっていました。
ですからB君は、怒られても怒られても、
「頑張らなきゃ」
と無我夢中です。しかし社長は売上が悪いと腹いせにB君を罵倒しているだけなので、B君がいくら気を使って仕事をしても、罵声を浴びない日はありませんでした。
ある日、大きな取引の話が持ち上がり、とても機嫌がよかった社長は、
「来年には、BにもMにも部下をつけて、なんかプロジェクトをやってもらおうと思ってる。俺はもうあんまり口をださないよ。」
と言いました。二人はなんだか久しぶりにわくわくしてきました。特にB君は、学生のときから製品開発に興味があったので、
「やっぱりこの会社に入って良かった…」
と思いました。実はもう仕事を辞めようかと思っていたのですが、社長の言葉を聞いて思い直しました。社長に怒鳴られない日々ももうすぐそこかもしれません。
社長はさらに、有名人との交遊歴を長々と披露し、
「俺の人脈も使えるようにするよ」
と言いました。ということは、自分の製品を一気に世に広められる可能性があります。
さらに、
「売上次第では、あんなこともこんなこともしたいね。」
と言って、二人をさらにわくわくさせました。
B君は、
「自分がもっと頑張って、いろいろ出来るようになって、この会社を発展させていくんだ!そしてゆくゆくは社長に…」
おもわず想像を巡らせました。
B君の未来はバラ色のはずでした。社長に洗脳されなければ…
つづく。
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